抗がん剤治療中に腕や脚にあらわれる「むくみ」は、薬剤性浮腫(ふしゅ)と呼ばれるもの。抗がん剤の影響で血管内から水分が出て、皮膚と皮下組織にたまるため、全身にむくみが生じます。
抗がん剤の中でも、タキサン系の抗がん剤を使用した際にあらわれやすい薬剤性浮腫。とくに「ドセタキセル」を投与し続けて3サイクル目以降にむくむケースが多いようです。
薬剤性浮腫の症状があらわれやすい部位は脚。片脚だけではなく、両足揃ってむくみやすい傾向にあります。
抗がん剤治療薬「ドキタキセル」を繰り返し投与すると、副作用として手足や顔にむくみが生じる可能性があります。
その予防薬として処方されるのが「デキサメタゾン」というステロイド薬。ドキタキセル投与後に2~3日服用することで、むくみの発症を遅らせることができます。
抗がん剤によるむくみ(薬剤性浮腫)にいちはやく気づくには、日頃から次の症状に心当たりがないか確認することが大切です。
むくみの処方薬として利尿薬が処方されます。利尿薬は、体内の水分バランスを整え、不要な水分は尿として排出する薬です。むくみをとる目的で処方されるほか、血液中にある過剰な塩分を排出するはたらきもあるため、血圧を下げる目的でも用いられます。
利尿薬の種類は実にさまざま。服用時の注意点は利尿薬の種類によって異なるため、必ず医師の指示に従って服用しましょう。
抗がん剤によるむくみ(薬剤性浮腫)は、すべての患者さんに起こるわけではありません。個人差もありますし、抗がん剤の種類にもよります。
抗がん剤によるむくみ(薬剤性浮腫)があらわれた際に、日常生活で気を付けたいことや工夫するポイントをまとめました。
むくんだ皮膚はデリケートになっているため、保湿を心がけましょう。
また、むくんだ皮膚は痛みに対する感覚が鈍っています。感染予防のためにも、虫刺され、ケガなどに注意して、皮膚に傷を作らないように気を付けましょう。肌の露出を控えることも大切です。過度な日焼けも肌がダメージを受けるので避けましょう。
締め付けが強い洋服は避け、ゆったりした下着や衣類を身につけましょう。あぐらや正座などの姿勢、長時間の立ち仕事はむくみを悪化させる要因なので避けましょう。
腕にむくみがある場合は、長時間重いものを持たないように気を付けてください。荷物はできるだけ軽くする、もしくは重さを左右均等に分散できるリュックサックをおすすめします。肩にあたるベルトの位置も一定の時間が経ったらズラすように気を配りましょう。
腕や脚のむくみがつらい場合は、就寝時にクッションなどを使ってむくんでいる部位の位置を心臓より高くします。脚の場合は、腰に負担をかけすぎないよう、ひざ下あたりから高くしましょう。
むくんでいる場合は、とくに塩分を控えましょう。塩分には水を溜め込む働きがあるため、さらにむくみやすくなります。
食事は塩分量に気を付けましょう。体に必要な塩分量は4グラム程度です。
塩や醤油などの調味料は直接かけるのではなく小皿に出す、ラーメンの汁は残すなどの工夫で塩分控えめな食事を目指してみてください。
ヒロシ(57)
肺がんステージ4
現在57才。妻と子供2人の4人家族。
突然の肺がんステージ3宣告を受け、抗がん剤治療をメインに闘病したが、骨への転移が確認される。